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Vol..7 「住宅購入熱と内装工事に見る中国人気質」
掲載時間  2011年08月17日  

 
「比較文化人類学」とは言っても、定点観測も定量調査も行っておりません。つまり、学問的手法を用いた報告ではなく、あくまでも蘇州を中心とした地域における(そう多くはない)体験を通した筆者の個人的感想を<あたかも教育に関わるようなフィルター>を通して述べているだけとも言えます。この文章を通して、中国理解を進めたり、日本を見つめ直すきっかけにしたりする人が一人でも増えていってくれることを願っています。

 
 
  「僕は車も無いし、マンションの部屋も無い、ダイヤの指輪も無いし、貯金も無い。でも僕には老いるまで君に付き添っていくと約束するよ。君が老いて、満足に歩けなくなったら、僕が君の杖になろう、君をおんぶするよ。君の歯が抜けたら、僕が噛み砕いてから食べさせてあげるよ。僕は絶対君の後から死ぬよ。なぜって、君一人をこの世に残したりしたら、たとえ幽霊になっても安心できないから。」

  これは、最近流行っているドラマの中での愛情宣言だそうです。このドラマを機に、ネット上では<裸体婚>という言葉が飛び交っているようです。これはとりもなおさず、「お金があって、部屋があって、車も持っていて、やっと幸せをつかむことができる」という今の風潮への反発も含まれていると思います。

 
 

  というように、中国の不動産バブルは、「これだけマンションを作っても、まだ足りないのか?」というぐらいのマンション新築ラッシュが続いており、ダイレクトメールその他による広告宣伝も洪水のように行なわれ、筆者から見れば「売り手市場ではなく、買い手市場じゃないのか?」と見えるのに、<まだまだバブルだ>と言われながら続いています。さらに、各デベロッパーの開発地区とマンションの紹介が内容のほとんどという「住宅ニュース」も、普通の番組として毎日放映されています。(毎日、住宅に関する新しいニュースがあるというのも不思議な現象なのですが・・・)

 
 

  しかし、今回のテーマは不動産バブルそのものではありません。新築マンションの内装工事に関する話です。

  ご存知の方も少なくないと思いますが、中国で新築マンションを購入する場合、まずはまだ建ってもいないマンションの部屋を(時には抽選を経て)買います。その後、売れ残りの部屋があれば、建築後のマンションを見て購入することもできます。しかし、いずれの場合においても、内装工事は全くといってよいほどなされていません。内装(というより部屋の設計)は自分でするもの(自分で考えるもの)となっています。マンションによっては、当然あって然るべき玄関ドアですら(仮)に取り付けているだけのところもあります。

 
 

  では、部屋を持っていなければ求婚もできない(と思っている)適齢層の人たちが、がんばってマンションを買ったあと、その内装工事はどのようにして行なわれるのでしょうか。

  もちろん、設計から施工までを請け負う内装業者(日本で言えば建築事務所にあたるレベルの業者)も存在しますが、そこに依頼すれば、当然費用も相当高くなります。なので、施工だけを請け負う業者(この場合、業者というより個人に近い)を探し、設計と監督は自分自身で行なうことになります。
この<設計と監督を自分自身で行なう>というのは、言い換えると<内装工事を進めながら、その都度その都度で、設計が決まっていく>、また<ねじ1本ですら、自分自身で購入する>、さらに<ほぼ毎日進捗状況と施工の質を確認しておかないと、いつどこで手抜きされるか分からないし、思っていたのと全然異なるものができてしまう>ということを意味しています。

  当然、相当な大仕事になります。だからかどうか、筆者の知り合いが上海郊外にマンションを購入し、内装を始めたところ、彼の会社は、彼に会社の車を貸し、なおかつ勤務時間も相当自由にさせてい

 
 
ました。彼が、化学系の研究者だということも勤務時間に関する了解をとりつけられた理由の一つであったと思いますが、そもそも会社自体に内装工事に関する理解がなければありえないことではないでしょうか。それだけ優遇された彼ではありますが、それでも実は安心できず、実家の両親に毎日マンションに通わせ、昼間施工しているおじさんの監督をさせていました。
 

  人当たりがよく、いつも笑顔だけれど、実は片づけが苦手なように大雑把な性格という印象を筆者は彼に対し持っていたのですが、この内装工事では、全く別人かと思われる姿を目にすることになりました。

  まず、施工の質に対し、非常に細かく、かつ厳しい要求を、かのおじさんに対し、繰り返し行なっていました。筆者などが「(中国なんだから)こんなもんじゃないの」と思ってしまうものでも、決して許さず、やり直しを求めていました。その姿を見て、筆者の勤務先が移転した際、施工監督の仕方がいかに間違っていたかを思い知らされる気がしたぐらいです。

  次に、購入したものについてです。運ばれてきたバスタブの栓がなかったり、ネットで購入した電灯のシェードが汚れていたりと、これまた「こんなもんじゃないの」と筆者が思ってしまうことに対して、彼は猛烈に抗議し、電灯では交換を拒否された結果、一度取り付けた別の電灯も含め、全て返品処理させていました。

  彼の行動とその結果を見ながら、「こんなもんじゃないの」ではなく、「やっぱり本当はやればできるじゃないか」に変わってきたのです。そして「黙っていれば、やらないこと・おかしいことを認めたことになる」というのも筆者が得た教訓の一つでした。(黙っていても、やってもらえた)日本に居たままでは、たとえこの歳になっても得られなかったのではないかと思っています。

 
(文責:奥野浩二)

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